31話)
茉莉は歩を受け入れた。
里中真理として、彼女の部屋の中で・・・。
すべてが終わり、ベットの上でグッタリと横になる真理の頭を、愛おしげになぞりながら彼は言う。
「俺達、やっと一つになれたね。」
真理はその言葉に答えるかのように、歩の胸の中に潜り込んでいった。
彼に抱擁されて、とても幸せだった。
(里中真理だとしても・・・。)
それでもいい。
心の中でつぶやいていると、ふいに歩がつぶやいてくる。
「初めてで痛かっただろうけど・・だんだん馴れてきて気持ちよくなってくるはずだから。」
言われて顔をあげてしまう。
行為自体は、とんでもなく痛かったからだ。
痛いのを、ずっと我慢しなくてはいけないものなのだ。と思ってしまったほどだったから。
「本当なの?」
問う真理に、歩はニッコリ笑う。
「痛いだけじゃあ、男女の関係は続かないよ。・・早く俺に馴染んでね。」
「やだ・・歩さん・・。」
彼に言われて、真っ赤になった真理は、再び彼の腕の中に潜り込んでゆくのだった。
歩のクスクス笑う声が、体を通して伝わってくる。
とても温かだった。
・・・それからベットの上で、どれくらいの時間を、二人で過ごしていただろうか。
シーツにくるまりながら、ぼんやりする真理を、歩は優しくさすり続けていてくれた。
髪の毛や肩を絶えまなく撫でられていると、とても安心した。
そのうち、ウトウトとまどろみ出す真理に、歩がささやく。
「ずっと側にいて・・俺のマリ・・。」
(私は側にいるよ・・・。)
歩のつぶやきに、茉莉は心の中で答えていた。
「もう少し休憩してから、帰っておいで・・・。」
とんでもなく優しい歩のささやき声。
そう言った言葉は、現実の事だったのか、夢の世界の出来事だったのか・・。
眠りの世界に浸っていった茉莉は、その時の記憶が曖昧になってしまったのだった。